癌との共存を目指しています。
僕は復職をしても、今、籍を置いている精神科だけの病院に勤め続けるだろうから、直接、診療に当たる可能性は低いだろうが、抗癌剤治療を受けている方がうつ状態となった場合について、一患者の立場から、独断と偏見で意見を述べたい。

第一選択薬は、ソラナックスもしくはコンスタン(同じ物を違う製薬会社が売っている)だろう。眠くなるという副作用が出る以外、目立った副作用はない。ただ、依存性が強いのが問題。僕が処方する立場なら、「この人、止められそうかな。」という観点で、処方するかどうか判断する。ちなみに開腹手術後、うつ状態となった時、唯一、この薬は効いた。抗うつ薬に分類されている薬と違い(ソラナックス、コンスタンは、抗不安薬に分類される)、即効性があるのも、この薬の優れたところだ。(抗うつ薬は、通常、飲み始めてから、効き始めるまで、1~2週間、かかる。)

うつ状態が2週間以上、続いた場合、うつ病と診断し、その上で抗うつ薬を処方するかどうかを判断するが、抗うつ薬を出す出さないの判断基準は、実質的には、希死念慮の有無だろう。要は、「死にたい。」と思うことがあるかどうか、である。

抗うつ薬の選択については、多くの本がオープンな立場を取っている(○○を選ぶと良い、とは書いていない)。患者として、抗癌剤治療を受けて思うのは、使っている抗癌剤の副作用とブッキングしない抗うつ薬を選ぶと良いのではないか、ということである。

具体的には、オキサリプラチンを使っているケースでは、SSRIより別なタイプの抗うつ薬を選ぶと良いだろう。(SSRIは、胃がムカムカするという副作用が結構、よく見られる。)下痢を来たしている患者さんには、三環形の抗うつ薬を選ぶと良いだろう。(三環形の抗うつ薬は、5~10人に1人の確率で便秘を惹き起こす。)

もちろん、薬物相互作用を考えると、他の薬に影響を及ぼすことが少ないとされているトレドミン(SNRI)、ジェイゾロフト(SSRI)を選ぶのが無難と言えば無難だが、抗癌剤の副作用を増強するような副作用を持たない薬を選ぶのが、患者さんにとって親切だと思う。

個人的には、「受け容れてしまう」のがベストだと思うのだが、なかなか、そうは思えないと思うので(僕もまた、パニックになるかも知れない)、自分がこれまで経験して来たことを基に私案を述べた。

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【2010/07/07 01:15】 | 精神科
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リズム
カノン
とても切実なテーマだと思いますので、のっぽ先生の専門家としての知識を、遺憾なく発揮した記事を掲載してくださって、本当に有難いことです。

興味深い話題が盛りだくさんで、どこの記事でお尋ねしたらよいか、迷ってしまいますが(というか、質問コーナーではありませんので、申し訳ないのですが)、2点ほどご意見を聞かせていただけましたら幸いです。

1.クロノテラピーについて
以前、NHKの番組「プロフェッショナル 仕事の流儀」で、上田泰己さんの回を観ました。上田さんは、体内時計の研究者で、この研究は、うつ病や不眠、がんの治療に役立つ、と述べています。
人間は地球の自転に合わせて、リズムを刻んでいるが、その生体のリズムに合わせて薬を投与すると、副作用を弱め、主作用を高める効果がある、ということでした。
ただ、皆さまのやり取りを拝見しますと、病院の勤務体制のこともあり、効果があるとわかっていても、この治療方法を受けることは、なかなか難しい、ということだったかと思います。
がんサポート情報センターのサイトを見ますと、ポータブル式の自動制御可能な動注ポンプ(クロノポンプ)の説明が出ていました。多くの患者さんが、クロノポンプを使えるようになると、クロノテラピーもより普及すると思います。厚労省がクロノポンプを承認していない、と書いてあったのですが、何がネックになっているのか、わかりません。

2.うつ病治療に「お手玉」
熊本日日新聞を拝見しました。のっぽ先生のご意見に、全面的に賛同します。
新聞の中で、面白かった記事は、心療内科医さんの「うつ病治療に『お手玉』脳のバランスを整える」でした。もちろん、症状の程度によるかと思いますが、記事の先生によりますと、「これまで数百人のうつ病患者さんを、お手玉療法で治療してきた結果、ほとんどが2~6か月で薬をやめられたり、使用量を減らせた」とのことです。
抗癌剤治療中の患者さんに、ジャグリングやお手玉を勧めるのは難しいと思いますが、余計なことを何も考えずに、リズミカルに手を動かして、脳内の血流が増えるのであればいいかなあ、という感想をもちました。

クロノポンプ
のっぽ187
カノンさん

このテーマについては、「一度は書いてみたいな。」と思っていました。のびのびになっていたのですが、仕事を再び休むようになり、「たまには、本業のことについて書いてみたいな。」と思い、書いた次第です。

>厚労省がクロノポンプを承認していない、と書いてあったのですが、何がネックになっているのか、わかりません。

僕も全く分からないです。

承認に至るには、誰かが申請をして、厚生労働省の役人がOKを出して、使えるようになる、というのが手順だと思います。

薬は製薬会社の人が申請をするのでしょうが、クロノポンプは誰が申請をするのでしょうか。クロノポンプを作っている会社の人が申請をするのでしょうか。(多分、そうでしょう。)

クロノポンプが使えるようになると、患者はとても有難いのですが、医者や看護師、薬剤師にとっては、どうでしょうか。率直に言うと、公的病院の看護師さんは、個人としては内心、賛成をしている人が多くても、全体としては(組合としては)「No!」ではないか、と思います。

クロノポンプは、製造会社や医療者にとって、利益の出ないものだったり、仕事を増やすものだったりするのではないか、と僕は考えています。

なお、クロノポンプについての考察は、僕の完全な想像です。

あと、製造会社にとって、多少、利益の出るものであったとしても、役人による審査をクリアするのには、多大なコストを要します。(手間ひま掛かる=お金が掛かる、でしょうから。)

製造会社にとって、審査をクリアするのに掛かるコストの方が、機械を売って得られる利益より大きいのでしょう。

そう考えると、厚生労働省の審査の厳しさは、彼らが言うところの「安全を保障している」という側面よりも、遥かに「受けられるはずの医療が受けられない害」の方が大きいと言えると思います。

作業療法と歩くこと
のっぽ187
カノンさん

>熊本日日新聞を拝見しました。のっぽ先生のご意見に、全面的に賛同します。

有難うございます。

統合失調症の患者さんに対して作業療法が行われるようになって久しいのですが、正直に言うと、効果は微妙です。少なくとも、十分とは言えないです。

手を動かすことが、うつ病の改善にどれ位、効果があるのか、僕には全く分からないのですが、作業療法系のアプローチは、慢性期の統合失調症患者さんを診ている限りでは、「厳しいな。」という印象を持っています。(理論的には、僕も有効そうな気はするのですが。)

自分が抗癌剤治療を受けていて思うのは、「人は歩くように創られている。」ということです。

このところ、寝る前にゼローダを飲んでいるので、結果、一番、体調の良い時間帯である夜中に3kmほど外を歩いているのですが、出掛ける前は「少し身体が重いな。」と感じられる時でも、歩いていると、次第に身体が軽くなり、気分も爽快になります。

何のエビデンスも根拠もないのですが、「歩くこと」は、かなり身体にいいのではないか、と最近、考えています。

そう考えると、抗癌剤の量は、ある程度の距離を歩ける位に調節するべきでしょうし、統合失調症の患者さんには強いパーキンソン症状が出ないように薬を調節するべきなのでしょう。(この文の後半は自戒の意味を込めて。)

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この記事へのコメント
リズム
とても切実なテーマだと思いますので、のっぽ先生の専門家としての知識を、遺憾なく発揮した記事を掲載してくださって、本当に有難いことです。

興味深い話題が盛りだくさんで、どこの記事でお尋ねしたらよいか、迷ってしまいますが(というか、質問コーナーではありませんので、申し訳ないのですが)、2点ほどご意見を聞かせていただけましたら幸いです。

1.クロノテラピーについて
以前、NHKの番組「プロフェッショナル 仕事の流儀」で、上田泰己さんの回を観ました。上田さんは、体内時計の研究者で、この研究は、うつ病や不眠、がんの治療に役立つ、と述べています。
人間は地球の自転に合わせて、リズムを刻んでいるが、その生体のリズムに合わせて薬を投与すると、副作用を弱め、主作用を高める効果がある、ということでした。
ただ、皆さまのやり取りを拝見しますと、病院の勤務体制のこともあり、効果があるとわかっていても、この治療方法を受けることは、なかなか難しい、ということだったかと思います。
がんサポート情報センターのサイトを見ますと、ポータブル式の自動制御可能な動注ポンプ(クロノポンプ)の説明が出ていました。多くの患者さんが、クロノポンプを使えるようになると、クロノテラピーもより普及すると思います。厚労省がクロノポンプを承認していない、と書いてあったのですが、何がネックになっているのか、わかりません。

2.うつ病治療に「お手玉」
熊本日日新聞を拝見しました。のっぽ先生のご意見に、全面的に賛同します。
新聞の中で、面白かった記事は、心療内科医さんの「うつ病治療に『お手玉』脳のバランスを整える」でした。もちろん、症状の程度によるかと思いますが、記事の先生によりますと、「これまで数百人のうつ病患者さんを、お手玉療法で治療してきた結果、ほとんどが2~6か月で薬をやめられたり、使用量を減らせた」とのことです。
抗癌剤治療中の患者さんに、ジャグリングやお手玉を勧めるのは難しいと思いますが、余計なことを何も考えずに、リズミカルに手を動かして、脳内の血流が増えるのであればいいかなあ、という感想をもちました。
2010/07/10(Sat) 01:08 | URL  | カノン #-[ 編集]
クロノポンプ
カノンさん

このテーマについては、「一度は書いてみたいな。」と思っていました。のびのびになっていたのですが、仕事を再び休むようになり、「たまには、本業のことについて書いてみたいな。」と思い、書いた次第です。

>厚労省がクロノポンプを承認していない、と書いてあったのですが、何がネックになっているのか、わかりません。

僕も全く分からないです。

承認に至るには、誰かが申請をして、厚生労働省の役人がOKを出して、使えるようになる、というのが手順だと思います。

薬は製薬会社の人が申請をするのでしょうが、クロノポンプは誰が申請をするのでしょうか。クロノポンプを作っている会社の人が申請をするのでしょうか。(多分、そうでしょう。)

クロノポンプが使えるようになると、患者はとても有難いのですが、医者や看護師、薬剤師にとっては、どうでしょうか。率直に言うと、公的病院の看護師さんは、個人としては内心、賛成をしている人が多くても、全体としては(組合としては)「No!」ではないか、と思います。

クロノポンプは、製造会社や医療者にとって、利益の出ないものだったり、仕事を増やすものだったりするのではないか、と僕は考えています。

なお、クロノポンプについての考察は、僕の完全な想像です。

あと、製造会社にとって、多少、利益の出るものであったとしても、役人による審査をクリアするのには、多大なコストを要します。(手間ひま掛かる=お金が掛かる、でしょうから。)

製造会社にとって、審査をクリアするのに掛かるコストの方が、機械を売って得られる利益より大きいのでしょう。

そう考えると、厚生労働省の審査の厳しさは、彼らが言うところの「安全を保障している」という側面よりも、遥かに「受けられるはずの医療が受けられない害」の方が大きいと言えると思います。
2010/07/11(Sun) 02:34 | URL  | のっぽ187 #-[ 編集]
作業療法と歩くこと
カノンさん

>熊本日日新聞を拝見しました。のっぽ先生のご意見に、全面的に賛同します。

有難うございます。

統合失調症の患者さんに対して作業療法が行われるようになって久しいのですが、正直に言うと、効果は微妙です。少なくとも、十分とは言えないです。

手を動かすことが、うつ病の改善にどれ位、効果があるのか、僕には全く分からないのですが、作業療法系のアプローチは、慢性期の統合失調症患者さんを診ている限りでは、「厳しいな。」という印象を持っています。(理論的には、僕も有効そうな気はするのですが。)

自分が抗癌剤治療を受けていて思うのは、「人は歩くように創られている。」ということです。

このところ、寝る前にゼローダを飲んでいるので、結果、一番、体調の良い時間帯である夜中に3kmほど外を歩いているのですが、出掛ける前は「少し身体が重いな。」と感じられる時でも、歩いていると、次第に身体が軽くなり、気分も爽快になります。

何のエビデンスも根拠もないのですが、「歩くこと」は、かなり身体にいいのではないか、と最近、考えています。

そう考えると、抗癌剤の量は、ある程度の距離を歩ける位に調節するべきでしょうし、統合失調症の患者さんには強いパーキンソン症状が出ないように薬を調節するべきなのでしょう。(この文の後半は自戒の意味を込めて。)
2010/07/11(Sun) 02:58 | URL  | のっぽ187 #-[ 編集]
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