癌との共存を目指しています。
復職をして、1年が経った。訪問者リストを見ると、うつの方や対人恐怖の方がいらっしゃるようだ。本業の精神科診療のことを少し書きたい。

もともと、人と話すことを仕事にしたい、と思い、精神科を選んだのだが、入った大学の医局が薬物療法を主にしていたので、薬物療法主体の診療をするようになった。しかし、今の職場もまたじっくり患者さんの話を聞いている時間はないので(一応、なるべく話は聞くようにしているつもり)、薬物療法主体の診療とならざるを得ない。なお、薬物療法の使用頻度は、地域の精神科医の数に反比例しているという論文もある位だ。(精神科医が少ないところで診療をする精神科医は薬をよく使うということ。)

この1年間、精神科の診療をして、印象に残ったケースを一つ。

双極性障害Ⅱ型(うつと軽躁を繰り返すタイプの躁うつ病)で、炭酸リチウムが著効した。中年の男性の方で自殺念慮が消えない方だったが、よく話を聞くと、うつだけではなく、軽躁状態も以前あったようで、炭酸リチウムを出したところ、自殺念慮が消え、仕事に復帰できた。

うつ(病)としてフォローされていて、抗うつ薬がいくつか試されたが、いまひとつ、すっきり良くならなくて、よく話を聞くと、過去に軽躁(あまり眠らなくても平気な時期があったとか)があったというケースだった。

この1年間では、ベスト3に入る会心の一撃(懐かしい響きですね)だったが、大体、会心の一撃を繰り出す薬は決まっていて、その多くは古くからある薬だ。炭酸リチウムもまた、そうである。

古くからある薬は、薬価が安く、この薬を患者さんにたくさん処方したとしても、製造している製薬会社は、殆ど儲からない。なので、炭酸リチウムに対するプロモーションは全く行われず、炭酸リチウムだけ処方した場合の効果を確かめる比較試験は最近は余り行われていないようだ。(もうすでに十分、比較試験がされているとも言えるが。)なお、先ほど挙げた中年男性には、抗うつ薬は処方せず、炭酸リチウムと睡眠薬だけを処方している。(睡眠薬だけは、どうしても止められないとのこと。)

=======(精神科の診療の話は、ここまで)========

腫瘍科において、抗癌剤の効果が実際のところ、どうなのかは、僕には分からない。(患者さんに処方したことがないので、実際の効果を肌で感じることは出来ない。)もしかすると、昔からある5-FUが一番優秀で、だけど、製薬会社としては薬価の高い、新しい薬をたくさん使って欲しいから、新薬についてのエビデンスが、それも多い目に薬を使った場合のエビデンスがよく出ているのかも知れない。比較的、新しい薬であるオキサリプラチンは優秀な薬であるようなので、必ずしも精神科と事情が同じという訳ではないと思うが、そこのところは少し慎重な方がいいのかも知れない。

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【2010/03/22 02:07】 | 精神科
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めえめえ
抗がん剤は患者のためのものではなく製薬会社と病院のためのものと言うのが「持論」の私にとって、のっぽ先生の今日のブログは手をたたきたいところです。
しかし、たとえ数%でも効くのならば新しい薬、強い薬、を使いたいと思うのが人間。やたらなことは言えない。自分自身に関して言えば、抗がん剤を拒否し、無治療を許してくださっている主治医に感謝するのみです。

薬の使用
のっぽ187
めえめえさん

精神科において、「いい薬だ。」と思える薬(古くからあって薬価が安いことが多い)は全くプロモーションされず、新しく出たんだけど、「どうかなあ?」と思う薬(「いい薬」に比べると、効きが劣るように思う)がよく宣伝されているのを見ます。

もし、腫瘍科においても、事情が同じなら(製薬会社の戦略は同様でしょう)、新薬は玉石混合という気がします。
個人的には、この玉と石を見分ける力が、その科を専門としている証だと思っているのですが、最近は、あまりに次々と新薬が出て来るので、付いて行けなくなりつつあります。(精神科での話です。)

>しかし、たとえ数%でも効くのならば新しい薬、強い薬、を使いたいと思うのが人間。

同感です。患者としてもそう思いますし、一臨床医としても、診ている患者さんに対してはベストを尽くしたいと考えています。

薬を使用するのは、得られる効果が生じる副作用(害作用)を上回ると考えられる時だけなので、使用しないという選択肢は十分ありだと思います。めえめえさんの主治医は、事の分かった医者だと思います。

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抗がん剤は患者のためのものではなく製薬会社と病院のためのものと言うのが「持論」の私にとって、のっぽ先生の今日のブログは手をたたきたいところです。
しかし、たとえ数%でも効くのならば新しい薬、強い薬、を使いたいと思うのが人間。やたらなことは言えない。自分自身に関して言えば、抗がん剤を拒否し、無治療を許してくださっている主治医に感謝するのみです。
2010/03/25(Thu) 19:59 | URL  | めえめえ #-[ 編集]
薬の使用
めえめえさん

精神科において、「いい薬だ。」と思える薬(古くからあって薬価が安いことが多い)は全くプロモーションされず、新しく出たんだけど、「どうかなあ?」と思う薬(「いい薬」に比べると、効きが劣るように思う)がよく宣伝されているのを見ます。

もし、腫瘍科においても、事情が同じなら(製薬会社の戦略は同様でしょう)、新薬は玉石混合という気がします。
個人的には、この玉と石を見分ける力が、その科を専門としている証だと思っているのですが、最近は、あまりに次々と新薬が出て来るので、付いて行けなくなりつつあります。(精神科での話です。)

>しかし、たとえ数%でも効くのならば新しい薬、強い薬、を使いたいと思うのが人間。

同感です。患者としてもそう思いますし、一臨床医としても、診ている患者さんに対してはベストを尽くしたいと考えています。

薬を使用するのは、得られる効果が生じる副作用(害作用)を上回ると考えられる時だけなので、使用しないという選択肢は十分ありだと思います。めえめえさんの主治医は、事の分かった医者だと思います。
2010/03/25(Thu) 22:16 | URL  | のっぽ187 #-[ 編集]
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